上野村

STORYNo.006

義父がつくってくれたうどん屋「やまざと」が世界を広げてくれた

手打ちのうどんと畑で取れた野菜を提供しながら、村内外のお客さんとの交流を楽しむ塚田さん。「本当に美しい」と語る上野村での暮らしぶりをお聞きしました。

  • 塚田 節子さん
  • 群馬県神流町(旧中里村)出身
  • 村民歴 45年 ※2020年9月時点

お仕事について教えてください

 上野村で「やまざと」といううどん屋をやっています。始めたのは34年前です。それまでは接客業の経験はなかったのですが、義理の父が空いている土地でお店を始めたんです。私も家にいちゃいられないな、お店に出なくちゃと思って、手伝うようになりました。

 今はその店を引き継いで、ほぼひとりでやっています。そんなにお客さんがいっぱい来るわけでもないので、楽しみながらのんびりとね。主人はお店にはノータッチです。山にイノシシを撃ちに行ったり、還暦野球チームで野球をしたりと毎日忙しそうにしています(笑)。

 昔は機械でうどんを作っていましたが、今は手打ちしています。みんなに教えてもらいながら自己流でやってきました。お店は楽しいですよ。おじいちゃんに居場所を作ってもらったことがありがたいなぁと思っています。

 お店でお出しするてんぷらなどの野菜は、ほとんど畑で作っています。じゃがいも、ネギ、大根、白菜、なす、トマトなど、何でも作ります。金時草って分かりますか? 揚げて天ぷらにするとおいしいんです。あと、珍しいのは地元の白インゲン。柔らかくて、そのままマヨネーズをつけて食べても、煮物や天ぷらにして食べてもおいしいです。

 

植物に囲まれた木造平屋が魅力的なうどん屋「やまざと」

手打ちのうどん、自家製の野菜のてんぷら、小鉢などの定食

うどん屋をやっていて良かったことは?

 やまざとには村の人も来てくれますが、村の外からのお客さんもたくさん来ます。いろんな場所から来た人とおしゃべりできることが一番楽しいですね。自分の知らない土地の話や、知らないお仕事の話を聞けるので、世界が広がります。

これからどのように過ごしたいですか?

 体を大事にしながら、今のままこの店を続けていければいいなぁと思っています。お店を始めた頃から思っていることですが、上野村に来て、うちのお店にしか寄らずに帰る人もいるかもしれないでしょう。そうすると、その人にとってはここが上野村のイメージになってしまいます。上野村に悪い印象を持って帰ってもらいたくないんです。またここに来たいなと思ってもらいたい、そういう気持ちでお店をやっています。

 

木のぬくもりあふれる、風情ある店内

上野村に来たきっかけは?

 私は45年前に結婚をきっかけに上野村に来ました。生まれ育ったのは隣の神流町(旧中里村)で、すぐ近くですし、母の実家が上野村だったので、昔からなじみがありました。そのため、上野村に来て驚くようなことは特になかったと思います。ただ、地元と比べると、お店もあるし人がちょっと華やかに感じました。どこでも「住めば都」と言うでしょう。車さえあれば、何も不自由はありません。

 この45年でいうと、移住してくる人が増えて、外の人との接点がかなり増えました。輪島から来た漆塗りの先生と親しくさせてもらったり、木工の職人が引っ越してきたり、他にも東京から来た人が上野村を気に入って移住して、うちのお店の畑を手伝ってくれて家族のようなお付き合いをしたこともありました。

上野村のどんなところが好きですか?

 上野村は、本当に美しいところです。私は高反山の風景が好きなのですが、その日の天気によって全然雰囲気が違います。山の中腹に雲がかかったり、雪景色だったり、自然界のなかで天気や季節の移り変わりを感じることができます。

 他にも、日常生活のなかでたくさん美しい風景に出会えるんですよ。たとえば、先日雨上がりに山のほうに歩いていると、クモの巣についた水滴に朝日が当たって、七色に輝いていました。クモの巣があんなに綺麗に輝いているのを見たのは私も初めてで、とっても感動しました。庭の物干し竿の水滴にも、光が当たってまるで宝石みたいに輝いていることがあります。冬は雪の結晶も見られます。

 星もキレイですよ。夜、お店が終わって家に帰るときに、ちょっと空を見上げると、オリオン座やふたご座が見えます。昔はよく星座の本と毛布を家から持ち出して、道路に寝転んで星座を見ていました。楽しかったですね。小さな村でしょ、車も少ないし、もし来てもライトですぐに分かるから。さすがに最近はもうやっていません(笑)。

 上野村にいらっしゃった際にはぜひ、こうしたキラキラした自然の美しさを感じていただきたいなと思います。